全年12月20日の投稿2件]

2023年 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

 風が窓の外で音を立てて蠢いている。昨夜から朝にかけて降った雪は、昼になってようやく出てきた日差しを反射して明るく輝いていた。
 今日はクラブで整備が入る為に午前だけで練習を終え、俺はこれから勇利と二人で帰宅するところだった。
 更衣室から玄関へと向かう廊下には背の高い窓が並び、外の日差しを室内に取り込むには最適だ。しかし晴れているとは言え、この風の強さだと外に出ればすぐに冷えてしまうだろう。

 隣を歩く勇利に視線を向ければ、俺の贈った白いマフラーは首から下げられただけだった。
 昔の俺なら隣を歩く相手のマフラーがきちんと巻かれていなくても、気にしたことすらなかったはずだ。自分がこんなにも世話焼きだったとは、勇利のコーチになるまで知らなかった。
 細い肩を強く抱いて立ち止まる。不思議そうに俺を見上げる勇利が、きょとんとしながらもつられて立ち止まった。無防備な表情が愛おしい。

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